デリバリーを導入してから売上は伸びているのに、なぜか手元に残るお金は思ったほど増えない。そう感じている飲食店経営者は少なくありません。
原因の多くは、デリバリーの手数料の重さにあります。この記事では、デリバリー手数料の実態と、経営判断としてどう向き合うべきかを解説します。
デリバリー手数料の実態
デリバリープラットフォームの手数料は、配達を誰が担うかによって大きく変わります。大手デリバリーサービスの公式な料金体系を見ると、次のような水準が一般的です。
| 配達方法 | 手数料の目安 |
|---|---|
| 配達代行を利用する場合 | 売上の30〜35%程度 |
| 自社スタッフで配達する場合 | 売上の10〜15%程度 |
| お客様が店舗まで受け取りに来る場合 | 売上の10〜12%程度 |
配達を代行してもらう形態を選ぶ場合、手数料は決して軽いものではありません。この数字は複数の大手デリバリーサービスの公式な料金体系で確認できる水準であり、噂やイメージではなく実際の相場です。
なぜ「店内と同じ価格」のデリバリーは危険か
具体的に考えてみましょう。1,000円の商品をデリバリーで販売し、手数料が30%だった場合、手数料として300円が差し引かれ、店舗に残るのは700円です。この700円から食材費・人件費・容器代・光熱費などをすべて賄う必要があります。
飲食店の原価率(食材費)は業態によって25〜45%程度が目安とされています。仮に原価率30%(300円)だとすると、手数料300円と合わせて600円が引かれ、残りはわずか400円です。ここからさらに人件費・容器代・家賃などの固定費を負担すると、利益はほとんど残らない、あるいはマイナスになる可能性があります。
「店内と同じ価格でデリバリーも提供する」という運用は、一見お客様にとって親切に見えますが、店舗側の利益を大きく圧迫する構造になっている点を理解しておく必要があります。「配送料無料」「店舗と同一価格」をうたうサービスも一部にありますが、その場合は手数料率が他社より高く設定されているなど、コストの負担が消費者から見えないところで店舗側に回っているケースがあります。表面的な謳い文句だけで判断せず、実際の手数料率を必ず確認してください。
デリバリーを「広告費」と捉える考え方とその限界
デリバリー手数料の負担をどう捉えるかについて、「新規顧客との接点を作るための広告費」と割り切る考え方があります。デリバリーアプリは「食べたい人が探す場所」であり、そこに掲載されること自体が実質的な広告枠だと考えれば、一定の合理性があります。特に広告予算を割けない個人店にとっては、現実的な発想です。
ただし、この考え方には見落としやすい限界があります。通常の広告費は「一度払えば、その後の認知や集客効果は蓄積される」性質のものです。一度広告を見て来店したお客様が、その後は広告費なしにリピートしてくれれば、広告費は投資として回収されたことになります。
一方、デリバリー手数料は同じお客様が2回目・3回目と注文するたびに、毎回同じ割合が発生し続けます。最初は「新規顧客と出会うための広告費」のつもりで払っていたとしても、二重価格の設定や直接注文への誘導といった対策・出口を用意しないまま使い続けると、その手数料はいつの間にか毎月確実に出ていく「固定費」へと姿を変え、静かに経営を圧迫するようになります。「広告費だから仕方ない」で思考を止めず、いつ・どうやって出口(直接注文・来店への転換)につなげるかを最初から意識しておくことが重要です。
実践的な対策
対策① デリバリー専用価格を設定する(二重価格)
手数料を吸収するために、デリバリー用のメニュー価格を店内価格より高く設定する「二重価格」は、飲食店業界で広く行われている一般的な対策です。上乗せの目安は、商品代金と容器・梱包コストの合計に対して10〜25%程度とされています。この設定により、デリバリー注文であっても最低限の利益を確保できる価格構造を作ることができます。提供する場所(店内か配達か)によって価格が異なること自体は景品表示法・独占禁止法上ただちに問題になるものではありませんが、実際にはほぼ使われない「通常価格」を偽って高く見せかけるような表示は問題になり得るため、それぞれの価格が実際に適用されている実勢価格であることが前提です。
対策② デリバリー経由客を直接注文・来店へ誘導する
手数料を「広告費」として意味あるものにするには、デリバリーで知ったお客様を、次回以降は直接注文(電話・自社LINE・店頭)や来店に転換してもらう仕組みが欠かせません。
- 配達の梱包物に、次回来店・直接注文で使える割引クーポンを同梱する
- 公式LINEやSNSのフォローを促し、次回以降は手数料のかからないチャネルで注文してもらう
- 店舗独自のテイクアウト・出前サービスを用意し、常連客にはそちらを案内する
対策③ 「直接注文への転換率」を計測する
デリバリーを広告費と捉えるなら、その効果を数字で検証することが重要です。デリバリー経由で知った新規のお客様のうち、何%が次回以降に直接注文・来店に切り替わっているかを記録してみてください。この転換率が低いままであれば、それは「広告費」ではなく単なる恒久的なコストとして利益を圧迫し続けている可能性が高く、デリバリーの運用方針そのものを見直す必要があります。
デリバリー手数料の経理処理・確定申告での注意点
経営判断と合わせて、日々の経理でも押さえておきたいポイントがあります。デリバリー手数料は、多くの場合プラットフォーム側が売上から天引きした後の金額が入金される仕組みになっています。このとき、次の2つの処理のどちらを取るかで帳簿の見え方が変わります。
- 総額処理:売上高は手数料天引き前の総額で計上し、差し引かれた手数料は「支払手数料」として経費計上する
- 純額処理:入金された金額(手数料差引後)をそのまま売上高として計上する
どちらの方法でも最終的な利益(所得)は同じになりますが、売上高の見え方が変わる点には注意が必要です。総額処理では売上高が実態より大きく見えるため、消費税の課税事業者判定(売上1,000万円ライン)に近い規模の場合は特に、どちらの処理をしているか意識しておく必要があります。判断に迷う場合は、経費の仕訳区分も含めて、確定申告前に一度整理しておくことをおすすめします(経費になるもの・ならないものの基本的な考え方はこちらの記事でも解説しています)。
飲食店経営全体の利益率の考え方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
デリバリーの運用方針で迷ったら
「デリバリー価格をどのくらい上乗せすればいいか計算できない」「今のデリバリー運用が本当に利益になっているか判断できない」——そんなときはAI番頭まっちゃんに相談してみてください。あなたのお店の状況に合わせた具体的なアドバイスをメールでお届けします。初回は無料です。
まとめ
- デリバリー手数料は配達代行利用の場合で売上の30〜35%程度が相場——公式の料金体系でも確認できる水準
- 「店内と同じ価格」でのデリバリー提供は、利益をほとんど残さない、または赤字になるリスクがある
- 「配送無料」「店舗と同一価格」を謳うサービスほど、手数料率が高く設定されているケースがある
- デリバリーを広告費と捉える考え方は合理的だが、リピート注文には毎回手数料がかかり続ける点に注意
- 対策は①二重価格の設定②直接注文・来店への誘導③転換率の計測の3つ
デリバリーは正しく設計すれば有効な集客チャネルになりますが、「なんとなく始めて、なんとなく続ける」状態では利益を静かに圧迫し続けます。まず自分の店のデリバリー価格が手数料を吸収できているか、確認するところから始めてみてください。
